椅子とめぐる20世紀のデザイン展椅子とめぐる20世紀のデザイン展

100脚の椅子を中心に、食器やキッチン用品、家電製品など、暮らしに身近なモノの美しいデザインを交えて20 世紀100 年のデザインの変遷を年代順にたどります。名作椅子と家具、食器、照明など小物をコーディネートし、映像や音楽も交え、その時代を象徴するデザインと暮らしを感じていただける「5つの部屋」を会場内に設置。実際に名作椅子の座り心地を楽しんでいただけるコーナーや、日本と北欧で名作椅子と暮らす家族を紹介する2作品をご覧いただけるミニシアターもご用意しています。

第1章

20世紀の始まり/
アール・ヌーヴォー 1901-1918

1880年代に確立された新しいデザイン様式「アール・ヌーヴォー」の流行の中で、20世紀は幕を開けます。

  • カーザ・カルヴェットのアームチェア

    カーザ・カルヴェットの
    アームチェア

    アントニ・ガウディ

    Antoni Gaudi

    1880年代に着工しながら未だに完成していない、スペインのサグラダ・ファミリアの建築を手がけていることで有名な建築家、アントニ・ガウディの作品。生命観がみなぎる独特の造形は、「直線に囲まれた生活の中では、人は安らぎを得られない」というアントニ・ガウディの信念が形となっている。

  • アームチェア

    アームチェア

    ヨーゼフ・マリア・オルブリヒ

    Josef Maria Olbrich

    19世紀末から20世紀初頭にドイツ、オーストリアで活動した建築家。ウィーン分離派の中心メンバーであった彼は1898年にウィーンの分離派会館を美しく過不足のない設計と壁面装飾で仕上げ、分離派の思想である「自由と新生」を体現。この作品も幾何学的でシンプルなデザインとなっており、凛とした雰囲気をまとっている。

  • ダイニングチェア

    ダイニング・チェア

    ブルーノ・パウル

    Bruno Paul

    ブルーノ・パウルはドイツの建築家であり、キャビネットメーカー(指物師=家具職人)でもあった。この作品をデザインした時期はアール・ヌーヴォー様式からアール・デコ様式への過渡期と考えられるが、ウィーン分離派の影響が感じられる。背の菱型のパターンは同時代に活躍したヨーゼフ・ホフマンがよく用いたものであり、貫を床に近い位置にもうけた点もホフマンの作品に酷似している。

第2章

デザイン革命/モダニズム 1919-1938

前時代の様式から離れ、簡素で機能と形態が融合したデザインが誕生。合板やスティール・パイプといった新素材や幾何学的な形態が用いられます。

  • アームチェアB3(ワシリー)

    アームチェアB3(ワシリー)

    マルセル・ブロイヤー

    Marcel Breuer

    工業用の素材であったスティール・パイプを世界で初めて家具に使った、マルセル・ブロイヤー。スティール・パイプを曲げた構造の椅子の登場は、椅子の歴史でも極めて重要な出来事だった。アイデアのヒントは、流行の最先端だったアドラー社の自転車のハンドルから。後に付けられた椅子の名前は、バウハウスの教授ワシリー・カンディンスキーにちなんだものである。

  • バルセロナ・チェア

    バルセロナ・チェア

    ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ

    Ludwig Mies van der Rohe

    第二回バルセロナ万国博覧会のドイツ・パヴィリオンに展示された、スペイン国王、アルフォンソ13世に捧げられた椅子。当時のオリジナル・モデルは白のやわらかな山羊革で張られていた。X型に交差したように見える脚は、実は曲げられたフラットバーを上下から接合させ、溶接した後に研磨している。ハンディクラフト的金属加工技術から生まれた名作。

  • ガラス・コンテナ・ブロック「クブス」

    ガラス・コンテナ・ブロック「クブス」

    ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルト

    Wilhem Wagenfeld

    バウハウスで学んだドイツを代表するインダストリアル・デザイナー、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトの作品。サイズの異なるキューブ型の器はそれぞれがモジュール化されており、パズルのように重ねていくことで、また、ひとかたまりのキューブになる。〝保存容器のモジュール化"の原点ともいえる作品。

第3章

デザイン黄金時代/
ミッド・センチュリー 1939-1968

20世紀の中頃、意匠はより軽やかになり、有機的な形態を多く採用。戦後復興と科学技術により、デザイン黄金時代が到来し生活水準を向上させます。

  • チェア LCW

    チェア LCW

    チャールズ・イームズ/レイ・イームズ

    Charles Eames/Ray Eames

    チャールズ・イームズとレイ・イームズは第二次世界大戦中、米国海軍の飛行機の操縦席の木製シート開発に関わっていた。その頃、成型合板による三次元曲面化へのノウハウが確立され、後のイームズの家具デザインへの道を拓くことになった。このLCW(ラウンジ・チェア・ウッド・ベース)は、戦後初の成型合板による三次元曲面シートの椅子である。

  • ロッキング・チェアRAR

    ロッキング・チェアRAR

    チャールズ・イームズ/レイ・イームズ

    Charles Eames/Ray Eames

    1948年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)主催の「ローコスト家具デザイン・コンペ」で原型が発表され、素材をFRP(繊維強化プラスチック)に切り替えて1950年に発表。軽量かつ頑丈で、ローコストで量産可能な特徴があり、当時の最新技術とモダンなデザインで高く評価された。この椅子は1950‐53年の短期間のみ製造されたガラス繊維強化プラスチック製の初期のモデルである。

  • バード・チェア

    バード・チェア

    ハリー・ベルトイア

    Harry Bertoia

    この作品はイタリア生まれの彫刻家ハリー・ベルトイアが、空間、形状、機能などあらゆる研究を重ねて生み出した優美なデザイン。ベルトイアは工業用素材に崇高な美しさを見出し、実用性だけでなく芸術作品へと高めることに成功した。1952年にデザインしたダイヤモンド・チェアをベースに、背もたれをハイバックにした形が鳥の姿に似ていることから、〝バード・チェア"の愛称で呼ばれている。

第4章

斬新なデザイン/ポストモダンへ 1969-2000

新しい世代の文化が興隆した60年代には、カラフルで斬新なデザインが生まれ、その後70年代にはポストモダニズムが起きますが、90年代には終息します。

  • チェアUP5+UP6

    チェアUP5+UP6

    ガエターノ・ペッシェ

    Gaetano Pesce

    この椅子には構造的な脚部はなく、成形された発泡体のひとつの塊でできている。女性の身体を表現した椅子の「UP5」と、ボール状のオットマン「UP6」で構成されており、これは鉄球に繋がれた女性(抑圧された女性)という作者の女性観を表現したもの。

  • チェア4801

    チェア4801

    ジョエ・コロンボ

    Joe Colombo

    イタリアを代表する建築家、デザイナーであったが、41歳で亡くなった。34歳から41歳までの7年間に約40もの賞を受賞。彼の作品はアイデアに溢れ、機能面や経済性等、細部にわたり検討がなされている。この作品も3つの成型合板の部材をうまく組み合わせたものである。

  • ラジオフォノグラフォ

    ラジオフォノグラフォ

    アキーレ・カスティリオーニ/
    ピエール・ジャコモ・カスティリオーニ

    Achille Castiglioni/
    Pier Giacomo Castiglioni

    ラジオとレコードプレーヤーを兼ね備えた優れた音響システムでもあり、家具としても非常にデザイン性の高い名品。スピーカーは、取り付け位置を好みや空間に応じて変えることができる。2023年8月に日本で新発売された。

エピローグ

時代に生まれ、時代を越える。

実際に名作椅子の座り心地を楽しんでいただけるコーナーや、日本と北欧で名作椅子と暮らす家族を紹介する2作品をご覧いただけるミニシアターもご用意しています。

  • 「名作椅子と暮らす」予告編